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無駄なくBLS

郵政民営化や政府系金融機関の統廃合などは時代にそぐわなくなった戦中戦後体制の改革である。
いわば政府部門の不良債権処理だ。 過去の遺物である日本型社会主義から脱皮するうえで重要な改革だが、そこから日本経済の新たなビジョンは浮かばない。
しかもK改革は道半ばである。 肝心の郵政民営化は移行過程をよくよく監視しないと、民業圧迫につながる。
政府系金融機関は一グループに集約されるが、中小企業金融は温存されており、運用しだいで中小企業保護が残りかねない。 揺らぐ改革求められるのは新たな成長のためのイノベーションである。

Sはイノベーションこそ最大の経済成長要因と考えた。 日本経団連の奥田碩会長が提唱する「科学技術創造立国」はその軸になる。
知の潜在力を生かすため財政資金や経営資源をいかに効率的に配分するかだ。 イノベーションは何も技術革新とは限らない。
戦後先進国では例のないデフレ下の改革には、難しさもあった。 破壊先行になりがちで、改革そのものがデフレをあおると懸念された。
それが改革を遅らせた面はたしかにある。 首相の言葉を信じるなら、ポストKの時代はポストデフレの時代になる。
平時の改革は非常時の改革よりやりやすいはずだ。 経済が低迷したあと、新たな成長をめざそうとしなかった先進国はない。
冷戦後の大競争時代の始まりに、米国はIT革命で臨み、EUは市場統合、通貨統合で対抗した。 まして、日本にはデフレ脱却のあとに人口減少時代が待ち受けている。
急速な少子高齢化を座視すれば、成長率はさらに低下する。 税収は減り、貯蓄率は下がる。
所得格差は広がる。 よほど思い切った成長戦略を打ち出さない限り、縮み経済のスパイラルに陥る危険がある。
もちろん、それをK型の財政支出による需要積み増しで支えるわけにはいかない。 先進国中最悪の財政状態にあるからだけでなく、財政危機の懸念で消費が冷え込むリカード効果を引き起こすからだ。
経営組織の革新なども含まれる。 人口減少時代にあっては働き方のイノベーションも大事になる。
働く意欲の高い女性や高齢者に存分に働いてもらう新たな市場を創設する。 ニートなどの未熟練の若者には多様な職業訓練をほどこす。

デフレ期の就職難で閉じこもりがちになった若者たちが能力を発揮する可能性はある。 故・森嶋通夫教授は新たな成長環境を築く政治的、組織的イノベーションとして「東アジア共同体」構想を提案している。
十年も前のことである。 この構想はやっと昨年末の東アジア・サミットでテーブルにのった。
しかし、K首相の靖国神社参拝で中国、韓国との歴史認識をめぐる亀裂は深まっており、構想倒れに終わりかねない情勢だ。 東アジア域内ではEU並みに貿易・投資の相互依存は深まっている。
「東アジア経済共同体」を政治の責任で創設することは、この地域の安定とともに新たな成長戦略の柱になる。 「本当の政治家とは、社会ないし国家のためにイノベーションを考えだす人である」とM教授は書いている(『日本にできることは何か」)。
新たな成長をリードするのは旺盛な企業家精神だが、その成長環境をつくり出すのは政治家の役割だ。 金融政策をC銀行に任せるのは成熟した民主主義国家の流儀だ。
N銀に圧力をかける前に、成長環境の醸成のために政治家が考えるべき課題は多い。 ポストKで「本当の政治家」を競うなら、数字合わせを超えた日本のイノベーションについてこそ語ってほしい。
「資本主義を破壊させ社会の土台すら壊しかねない」と「感染性の強欲」に怒ったのはあのA氏だった。 エンロン、ワールドコム事件のあと、米国のビジネス社会を取材したことがある。
米国の資本主義は大揺れになっていた。 C氏は「会計を超えたところに問題の根がある」と危機感をあらわにした。

不正会計を見逃した監査法人が消滅させられるなかで、ライバルの監査法人トップは規制の行方に神経をとがらせていた。 この米大企業の不正会計事件と日本のライブドア事件とを単純には比べられない。
しかし資本主義の根幹を揺さぶっていることに変わりはない。 危機に際し米国が底力をみせたのは、企業改革法(サーベンス・オクスリー法)の制定など米資本主義の信頼を回復するための迅速な行動だった。
資本主義の規範を取り戻すために、日本はいま何をすべきかが問われている。 ライブドア事件は様々な角度から語られるが、議論の混乱もある。
はき違えてならないのは、第一に、この事件は国民の資産である証券市場で違法行為をした若い経営者の過ちであり、改革のせいではないという点だ。 K改革が批判されるとすれば、改革が遅れ、内容も不十分であるという理由からだろう。
冷戦後のグローバルな改革競争で日本は周回遅れである。 どんな政権で資本主義の規範取り戻せI公正な市場の審判役を、改革の流れは変えるべきではない。
第二に、IT革命のせいでもない。 人口減少社会が現実になるなかで、日本の優先課題はどう成長力を高めるかだ。
ITをテコにした生産性向上こそ成長力底上げのカギを握る。 IT革命はこれから日本の出番である。
第三に、事件でM&Aの潮流が変わるわけではない。 ダイナミックな技術革新の時代に、本業を軸に明確な事業ビジョンを実現するためのM&Aは「時間を買う」有効な経営手法である。
経済活性化にもつながる。 一方で、事業ビジョンもなく錬金術のような敵対的買収は人材の流出などによりほとんど成功しない。
「良いM&A」と「悪いM&A」をどう見分けるかだ。 ライブドア事件がみせつけたのは、「資本主義の規範」がいかに欠落していたかである。
そろばん日本資本主義の父であるSは「論語と算盤」のなかで「富を成す根源は何かといえば、J、正しい道理の富でなければ、その富は永続することができぬ」と述べ、徳と富の一致を説いている。 Mは「プロテスタンテイズムの倫理と資本主義の精神」で、禁欲的な宗教倫理と資本主義精神のかかわりを分析してみせた。
一見かけ離れてみえる倫理観と資本主義精神の融合が経済発展を導く。 資本主義の勃興期に唱えられた巨人たちのメッセージは時代を超えて、いまに生きている。
市場主義の先駆者、アダム・スミスの経済学もH点は道徳哲学にある。 「人間がどんなに利己的なものと想定されうるにしても」という書き出しで始まる「道徳感情論」は人々の抑制的な揺らぐ改革「倫理なき自由経済は破滅に向かう」と日本経団連の次期会長、O氏は警告する。
資本主義を支える二本の柱は倫理観と規律(ルール)である。 市場の自由に見合う高い規律がいかに重要であるかをこの事件は示した。
証券市場に公正な審判役が不在だったことが、不正を放置する結果につながったのは事実だろう。 いまの金融行政の仕組みに基本的な問題がある。

金融庁のもとに証券取引等監視委員会を置くのは、コーチ(業者行政)のもとに審判(市場監視)を置くようなものである。 これでは、とても公正なゲームは望めない。
証券監視委の増員などでお茶を濁すのではなく、金融庁から切り離し、米国のSEC並みに独立した組織に改革するしかない。 財政と金融の分離のため、旧大蔵省から金融部門を分離したのは正しい選択だった。
金融庁なしには不良債権処理もままならなかったはずである。 しかし、それは金融行政改革の第一歩にすぎなかった。


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